「800×595×4mm」(2022)

‘あるものがある’という前提のもと、自身が身を置く状況及びその状況の際にある物質と自身の行為による関係から、場所に着目した際の、‘ある場所に在る’の確認が研究の根底にある。‘ある場所に在る’とは、自身と他のものがあることで初めて自身を含めた場所の位置関係を認識できるのではないかと考えている。そのため、私は‘もの’と‘私’の距離を測るように制作している。

本作品は、自身の視点を ‘版木を彫る’ことを起点とし、版と紙、それを行う行為の関連性の提示を試み、‘もの’と‘私’の距離とは何かを探ることを目的とする。

‘版木が在ること’を実感するために、私は木の形態が変わるまで分解したいと考えた。そこで具体的には、版木の片面のみを彫り進め、記録するために両面を刷りとった。両面を刷る理由は、より版木を一つの物質として捉えることができるのではないかと考えたからである。

彫り進めるうちに、彫ることにより木の質量が減る一方、紙に写すときそこには紙の地が残ることに興味を持った。そこで展示では‘かつてあった木の質量を空間から引くこと’を意識した。以上をふまえ、展示では一枚の板木の両面を刷った過程、そして最後に残った版の展示を行なった。

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